2013年9月3日火曜日

家庭用パーソナルサーバを考える

 Nexus7を多用するようになってから,PCを使用して得られるエクスペリエンスに対し,PC自体がなんだか大変大げさなもののように思えてきた.PC,特にデスクトップPCは,立ち上がりやシャットダウンに時間がかかり,また大量の電気を消費し,また設置スペースを取る.力のあるPCならばファンの騒音もかなりうるさいく,部屋に熱を排出する.背面は配線でごちゃごちゃしやすく,簡単には移動させられない.また椅子に座っていなければ,基本的に使用できない.しかもトータルなコストもNexus7に比べて大きい等々.

 Nexus7等のタブレットは,完全にPCの代わりになることはできないが,コンシュマーの求めるエクスペリエンスの,ほとんどをまかなうことができるように思う.やはりPCは,仕事用の事務機,あるいはデータ加工工具のような位置づけになっていくのだろう.

 消費者が次に求めるのはおそらく,自分のタブレットやスマホで使用するパーソナルサーバ,つまりプライベートクラウドだろう.特に極めてプライベートな情報を安心して,自己管理の下に置いておくためには,究極的には自分でサーバ管理するしかない .そして格納されたプライベートデータは,タブレットやスマホやPCやスマートTV等の様々なデバイスでアクセス可能であること.すなわちデバイスインディペンデントでアクセス可能でなくてはならない.だとすると,今後ありえる需要はパーソナルサーバということになるが,そのサーバには通常のサーバとは異なるいくつかの条件があるように思う.例えば
  • パーソナルサーバマシンを自己管理可能な場所に設置する
  • パーソナルサーバをインターネット上に公開する
  • パーソナルサーバに固定IPアドレスとドメイン名を持たせる
  • パーソナルサーバに使用したいサービスをインストールし,設定する
  • パーソナルサーバに使用するデータを保管する
  • クライアント端末にサービス用クライアントアプリをインストールする
  • パーソナルサーバは定期的に自動バックアップされる
  • パーソナルサーバにUPSを接続する
  • ストレージはRAID構成
という要求を満たすデバイスが,個人や家庭に必要になるように思う.おそらくそれは,今までのPCの役割を兼務させたサーバマシンということになりそうだ.つまりPCの未来は,Windows8のようにタブレット側に近づくことではなく,サーバ側に近づくことにあったのではないだろうか?

 基本的にサーバマシンは24時間稼働となるので,家庭において24時間稼働するマシンとしては,低消費電力・低発熱・低騒音・超小型筐体・高耐久性・巨大ストレージ・メンテナンスフリー(モーターレス,メカニカルな駆動部の無いこと)・わかりやすい操作UIという特徴が求められる.

 そうなるとNUCのような,手のひらサイズのPCが候補に挙がってくる.ストレージ をSSDにすれば,駆動部はほぼ駆逐できる.問題はODD(光学ドライブ)だが,USB接続と言うことになるだろう.

 理想的なパーソナルサーバのイメージとしては,NUCぐらいの大きさに合わせたUPS内蔵の超小型サーバラックに,NUCぐらいの大きさのサーバ(PC本体)・同形状のODD・同形状のSSD(複数台可能)をマウントする.ラックは電源供給と各モジュールの接続(USB3.0?)をサポートするため,背面の配線の取り回しは不要.このラックに電源ケーブルとLANケーブル(無線LANによりネット接続するのであればこれも不要)を刺せば,パーソナルサーバとなるというわけだ.拡張はラックにモジュールを差し込むことによって行う.

 サーバ操作や管理はタブレットのアプリから行うことができれば,サーバ初心者にとっても管理はかなり楽になるだろう.それにサーバとしてのみ使用するのであれば,ヘッドレス,すなわちモニタもマウスもキーボードも不要となる.またサーバをPCとしても使いたい場合は,モニタ・マウス・キーボードを接続することになるが,マウス・キーボードはできたら,Bluetoothで無線接続させたい.



 ただ実際のNUCには,だいたいCPUファンが存在する.ファン不要のCPUが,タブレットを実現可能にしたように,できたらパーソナルサーバもファンレスのCPUを採用したいところである.ファンレスのサーバ用CPUの開発は,できないものなのだろうか?

 ということで,現実的には現存するNUCが最も理想の家庭用パーソナルサーバマシンに近いと言えるだろう.ハード面は確かにそうなのだが,ソフト面ではどうだろうか?現在はパーソナルサーバ用WindowsOSなど存在しない.NUCにノーマルなWindows8がインストールされているのであれば,WindowsOSのPCをクラウドサーバ化するアプリを探し出して,インストールするということになるだろう.しかし通常のサーバ構築のような作業は,一般の人には大変だろうから,サーバ構築作業が自動的に行われるようなインストーラを含む簡易的パッケージのようなものが必要になるだろう.

 現在のところ,これらの用件を完全に満たしているソリューションは,見当たらない.現在のところは,ほとんどのユーザーがクラウドとして,Google等の大手のサービスを利用していると思われる.それらのサービスを信用して,そこに極めて機密度の高い情報を保管するのも一つのポリシーだと思う.しかしそのサービスが永遠に続くものとは言い切れない.サービス会社の都合により,サービスの内容は変わっていく場合もあるし,採算が合わなければ廃止される可能性もある.例えばつい最近では,Google Readerサービスが終了したことが記憶に新しい.この時そのサービスの多くのユーザは,別のサービスへの引っ越しを余儀なくされたのである.

 世の中には大切な自分の情報を他人に任せず,自己管理したい人もいるだろう.その人達は,多少不便であってもパーソナルサーバが欲しくなるはずである.今後そのようなニーズに応えた製品やソリューションが出てくることを期待したい.

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