2013年9月8日日曜日

家庭用パーソナルサーバを考える2:Raspberry Pi とプラグコンピュータ

 前回の「家庭用パーソナルサーバを考える」では,家庭用パーソナルサーバのハードウェアの条件をいくつか挙げてみた.その条件とは以下のものであった(いくつか追加,太字).
  • 低コスト
  • 低消費電力
  • 低発熱
  • 低騒音(ファンレスで無音が望ましい)
  • Webアプリに対応できる処理能力
  • 超小型筐体(省スペース)
  • 高耐久性(モーターレス,メカニカルな駆動部の無いこと)
  • 拡張可能な巨大ストレージ
  • メンテナンスフリー(モーターレス,メカニカルな駆動部の無いこと)
  • 高速ネットワーク接続
  • わかりやすいリモート操作UI
  • 自由なサービス選択(サービスインストール)
  • 柔軟なカスタマイズ性(プログラマブル)
  • (オプション)UPSバッテリー
  • (オプション)RAID
  • (オプション)オートバックアップ
  前回はこのハードウェアの候補として,NUCを例としてあげた.しかし現在,NUCは,ファンレスではないため,上記の条件のいくつかを満たすことができない.また価格も家庭用として安いとは言えない.

 コスト以外のほとんどの条件を満たすハードウェアの一つは,ピノー「サバ太郎」だが,これは価格が廉価版でも4万6千円と家庭用としては高額だ.もう一つの選択肢は,超小型サーバとして有名なぷらっとホーム「OpenBlocks」となるが,やはり価格に難がある.

 一般消費者向け製品として最も有力な候補は,Globalscale Technologies「GuruPlug」だ参考リンク.これは「玄柴」として玄人志向から発売されて話題となったACプラグ型コンピュータ「SheevaPlug」の改良版だ.1.2GHzのARMのCPU,無線LAN・Bluetooth・ギガビットイーサネット内蔵,Debian6.0プリインストール済みで,価格も1万9千円とお手頃.この製品のユニークさ・おもしろさについては,このリンクを参照のこと.この GuruPlug の問題点はストレージだ. 内蔵FLASHが512Mしかなく,内部にSSDなどを追加できるスロットやSDカードスロットもない.したがって基本的にはUSBで接続できるストレージ機器で,容量を増やすしかない.

 それでもこの GuruPlug は,現時点において,安価な家庭用パーソナルサーバのハードウェアとして,最も有力候補であることは間違いない.現在日本では扱っていないようだが,このGuruPlugの改良型である「DreamPlug」も存在する.さらに,いわゆるプラグ型ではないが,ACアダプタ電源供給による超小型のボックス型サーバ「MiraBox」は,USB3.0にも対応した Globalscale Technologies の新製品である.いずれも価格は2万円以下だ.このように Globalscale Technologies社を筆頭として,超小型サーバ(やPCボックス)は,着実に進化してきているように思う.

 もし一般消費者向け製品でなくても良いのであれば,ラズベリーパイ財団「Raspberry Pi(ラズベリーパイ) Model B」も候補に挙がるだろう.Raspberry Piは,コンピュータ教育用に開発された安価なPC基板だ.ストレージとして別売のSDカードを使用するところがユニーク.基板価格は 4,400円程度で大変安価であるが,別途SDカードを準備する必要がある.この基板を用いてサーバを作成・構築すれば,安価なパーソナルサーバが完成する.Raspberry Piについては,たくさんの書籍も販売されているため,資料には事欠かない.つい先日には,このPC基板と書籍のセット販売すらされていた.

 Raspberry Piは基板で販売されているため,製品というよりパーツといった方が良いのかもしれないが,これを利用したパーソナルサーバが出てきても不思議ではない.家庭用製品としては,ソフトウェア面での簡便さは是非とも必要となってくるが,基板は4,400円程度なのでこの基板を元にして,サーバとソフトウェアとストレージを合わせたソリューションを開発し,価格を2万円台ぐらいで消費者向けプライベートサーバのエントリーモデルを販売することもできそうな気もしないでもない.調べてみると,実際に Raspberry Pi でサーバを構築して公開しておられる方も存在する.

  Raspberry Piの問題点は,ストレージの貧弱さとCPU処理能力(700 MHz)の弱さだ.前述のRaspberry Piをサーバとして運用している方の弁によると,CGI等の負荷がかかると,ページ表示には数秒かかってしまい,実用ぎりぎりのラインと言うことだった.ストレージはUSBで拡張するとしても,CPUの弱さはどうしようもない.今後CPU処理能力の強化されたバージョンが登場するのを待つばかりだ.

 このようにしてみると,ハードウェア的には家庭用プライベートサーバには,それなりに選択肢が出てきたように思う.しかし一般消費者でも使えるようになるためには,ソフトウェア面でのユーザーフレンドリー性やわかりやすいUIが必須となる.それはタブレット端末側のアプリによるリモート制御で実現することになると思われるが,現状では,そのようなソリューションはまだ出てきていない.ただこのように展開されてきた超小型サーバのラインナップを見てみると,少なくとも今後,低コストで家庭用プライベートサーバのソリューションが出てくる下地はできてきたと言えるのではないだろうか.
未評価
GuruPlug
http://www.miniserver.jp/linenap...
このWebサイトは未評価です。評価を表示できません。
Webサイト安全性評価

0 件のコメント:

コメントを投稿